債務整理

自己破産をすると仕事はどうなる?

雇用環境の悪化・業績低迷が続いて給与やボーナスのカットがあれば、近い将来、借金の支払いに窮する方もいることでしょう。

借金の支払いが約定通りにできなければ、自己破産などの債務整理を検討するべきです。
しかし、自己破産は世間的にネガティブなイメージが強いので、仮に破産するとしても、周りの知り合いにできるだけそのことを知られたくないと思うでしょう。

特に「職場に自己破産がバレて、クビになったらどうしよう…」と考えると、不安は募るばかりです。

果たして、自己破産をすると、職場にバレてしまうのでしょうか?また、仮に自己破産が会社にバレたとしたら、それが理由でクビになってしまうのでしょうか?

1.自己破産すると会社にバレるケース

結論から言えば、後述するケースを除いて、基本的に、自己破産をしたからといって、そのことが会社にバレることはありません

もっとも、自己破産が認められると(破産手続が開始した時点及び免責の許可・不許可の決定が出た時点で)、破産者の氏名・住所が官報に掲載されます。官報は、誰でも閲覧ができるので、官報への掲載をきっかけに、第三者に破産の事実がバレる可能性はゼロではありません。

しかし、そもそも日常的に官報を目にする人は限られていますので、現実的には官報の掲載情報から知り合いに破産がバレることはまずないでしょう。

【わざわざ申告する必要はない】
自己破産をするときに「もし黙っていて、会社に後でバレたら取り返しのつかないことになるのでは?」と心配になる方もいると思いますが、基本的には、わざわざ自分から会社に破産の事実を申告する必要はありません。
確かに、一部の職業については、法律上、自己破産手続中に限って資格制限を受けるので、該当する職業に従事している場合は、自分から破産の事実を申し出る必要があるでしょう(さもないと、会社は、資格制限中の人間に資格を使った活動をさせることになってしまいます)。しかし、破産により資格制限を受ける仕事は限られており、大多数の人は、破産しても何ら制限なく仕事ができるので、敢えて会社に申告する必要はありません。

しかし、会社に破産がバレてしまうケースは、いくつか存在します。

(1) 退職金見込額証明書を請求したとき

自己破産をするときは、財産に関する書類を提出しなければなりません。将来もらう予定の退職金も財産に該当するので、会社から退職金見込額証明書を発行してもらう必要があるのです。

しかし、会社側は社員から退職金見込額証明書の請求を受けることは通常ありませんので(住宅ローンの審査等で必要となる場面は考えられ得ますが)、この書類を請求した段階で、社員が自己破産しようとしていることに会社が気づく可能性はあります。

そうした状況を避けたい場合は、退職金見込額証明書の請求はせずに、会社の就業規則・退職金規程をもとに、自分で退職金見込額を計算して対応する方法もあります。

正確な算出方法が分からない場合は、弁護士に相談をしましょう。 

(2) 会社に借金している場合

もう一つ、自己破産が会社にバレるきっかけとなるのは、会社から借金をしているケースです。

自己破産では債権者を選べないので、会社からお金を借りていれば、会社もまた債権者の1人である以上は、会社に対しても、弁護士の受任通知は等しく送られます。その時点で自己破産する予定であることはバレてしまうでしょう。

なお、会社に対する借金を給与天引きで返済してきた場合は、この給与天引きもストップしてもらう必要が生じます。

(3) 給与が差し押さえらている場合

破産申立の時点で既に給与の差押手続が発生している場合、この差押手続は、破産手続が開始すると、失効あるいは中止となります。

このとき、会社に対しては、「債務者(給与差押を受けている社員)について破産手続が開始したので、差押手続を止める」という通知が行くことになるため、この時点で、破産の事実が会社に知られることになります。

2.自己破産を原因に解雇される?

前述のとおり、自己破産は、特殊なケースを除いて、基本的に会社にバレることはありません。

しかし、万が一、自己破産がバレてしまった場合は、それが理由で会社をクビになってしまうのでしょうか?

(1) 自己破産を原因に解雇はされない

自己破産をしても、そのことが原因で解雇されることはありません

昔は、自己破産を理由とした解雇が可能だったのですが、現在は、法改正により、自己破産を理由とする解雇は(解雇権の濫用に当たり)認められていません(労働契約法16条)。

よって、仮に、会社にバレたとしても、自己破産を理由として職場を追われることはないので、その点は安心です。

(2) 会社に居づらくなる可能性はある

ただし、破産が会社にバレた結果として、職場に居づらくなる可能性はあります。
自己破産した事実が社内で広まれば、クビにはならなくても、相当気まずい思いはするでしょうから、結局居づらくなって自主的に会社を辞めてしまう、というケースも中にはあります。

あるいは、そのまま会社に残ったとしても、任される仕事の内容や地位・役職などに、事実上の影響が出る可能性は否定できません。

3.自己破産すると制限を受ける職業

前述のとおり、自己破産をしても会社をクビにはなりませんが、法律上、破産をすると一定期間資格制限を受けるものとされている職業があります。

自己破産をすると資格制限を受ける職業に関しては、一定期間は、その資格を用いた仕事に従事できません(それ故、会社には、破産の事実を予め申告しておく必要が生じます)。

該当するのは、主に他人の財産を扱う仕事です。対象となる職業の一例をご紹介します。

  • 士業に従事する職業
    弁護士、弁理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、公認会計士、税理士、行政書士、通関士、宅地建物取引士
  • その他の影響を受ける職業
    宅地建物取引業者、貸金業者、警備員、建設業者、風俗営業者、生命保険募集員など。

とはいえ、自己破産をしたとしても、資格制限のある職業に就けなくなるのは、あくまで一定期間です。

一度破産したら一生仕事に就けないのではなく、制限を受けるのは、あくまで、破産手続(=破産手続開始決定から免責許可決定の確定まで)の間だけです。期間の目安は、およそ3~6ヶ月ほどでしょう。

免責決定許可確定によって復権し、資格制限は解除されるので、以前と同様に働けます(破産法第255条第1項①規定。なお、免責が不許可となった場合は、破産手続が終結しても復権しないので、法律が定める別の復権の条件を満たす必要があります)。

資格制限を受ける仕事に就いている場合、自己破産期間中は、所属部署を変えてもらったり、一時的に休職させてもらったりするなどして対処しましょう。

なお、資格制限との関係で、どうしても破産はできないという場合でも、そこで借金の解決を直ちに諦めずに、弁護士に相談して、職業・資格制限のかからない、その他の債務整理(個人再生、任意整理)の可能性も検討してみましょう。

4.自己破産の際は弁護士にご相談ください

自己破産をしても、会社をクビになることはありません。そのことを理由に解雇をすることは法律で禁じられているからです。
また、資格制限を受ける仕事でなければ、会社に申告する必要はありませんので、基本的には会社にバレることもありません。

自己破産は、とかくネガティブな印象を持たれがちですが、多額の負債を負った債務者が新たに出直すための前向きな制度です。

借金の支払いができなくなったときに、いたずらに不安を持ち続けて状況を悪化させるのは最も避けなければなりません。返せそうもないと分かった段階で、いち早く弁護士に相談をすることが大切です。

泉総合法律事務所池袋支店では、自己破産の解決事例が豊富です。経験豊かな弁護士がお客様の現状を丁寧にお伺いした上で、より良い解決策を提案致します。

自己破産が与える仕事への影響についても相談に乗っていますので、気になることは何でも聞いてください。

自己破産に関する相談は無料です。
借金問題のことは決して一人で悩まず、弁護士と一緒に解決をしていきましょう。

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