債務整理

個人再生手続における東京地裁とさいたま地裁の違い(手続・費用等)

個人再生手続における東京地裁とさいたま地裁の違い(手続・費用等)

個人再生手続は、裁判所に申立てをして、支払いきれない恐れがある借金の返済負担を、大きく減らしてもらえる債務整理手続です。

自己破産のように裁判所により財産が処分されることはありません。住宅ローンがある持ち家も残すことが出来ます。さらに、ギャンブルなど借金の原因が問題となることもありません。

個人再生手続の申立ては、申立てをしようとしている人が生活している地域の裁判所に対してすることができます。

各地の裁判所では、個人再生手続の運用が細かく異なっています。

そこでこのコラムでは、東京地裁とさいたま地裁の、手続の内容、費用や手間、借金をどれだけ減らせるか、と言った運用の違いについて解説します。

1.個人再生委員

個人再生委員とは、個人再生手続の中で、裁判所を手助けする役職の人です。主な仕事としては、

  1. 申立人の借金や財産、家計の調査
  2. 申立人が再生計画(※1)の案を作成する手助け
  3. 再生計画の履行可能性(※2)について、裁判所に意見を報告

などがあります。

※1再生計画 減額された借金の返済計画のこと。再生計画を裁判所が認可することで、借金の支払負担が減ります。
※2 再生計画の履行可能性 将来、申立人が、減額された借金を再生計画どおりに支払える可能性のこと。再生計画が認可されるための条件の中で、最も重要なものです。

個人再生委員に関しては、東京地裁とさいたま地裁とでは、大きな違いがあります。

(1) 東京地裁における個人再生委員

東京地裁では、個人再生手続を申立てると、必ず個人再生委員が選任されます。そのため、個人再生委員への報酬15万円が、弁護士費用や裁判費用以外に追加で必要となります。

報酬は、次に説明する「履行テスト」により支払われますので、手続申立後に分割払いするものと考えてください。

東京地裁では、少なくとも1回、個人再生委員と面談する必要があります。

(2) さいたま地裁における個人再生委員

さいたま地裁では、申立人が弁護士を手続の代理人としていれば、個人再生委員が選任されることは、ほとんどありません。

もっとも、弁護士に依頼せずに、申立人本人で手続を申立てた場合には、個人再生委員が選任されます。司法書士に依頼した場合も、同じです。司法書士は、書類作成代行が業務で、手続自体を代理することは出来ないからです。

なお、弁護士が代理人となっているときでも、例外的に、個人再生委員が選任される場合もあります。個人再生委員が選任されなかった場合には、個人再生委員との面談は当然ありません。

個人再生委員への報酬は15万円です。金額は東京地裁と同じですが、支払い方が異なります。

個人再生委員の報酬15万円は、原則として、申立ての際に一括で支払う必要があります。

分割払いが許されることもありますが、10万円以上納め切らないと、個人再生委員が選任されませんから、手続が始まりません。

2.履行テスト

履行テストとは、裁判所が、再生計画の履行可能性を判断するために、申立人に、再生計画での返済見込額を手続の間に実際に支払わせて、返済能力をテストするものです。

東京地裁もさいたま地裁も、履行テストを行っていますが、積立口座が異なっています。

(1) 東京地裁の履行テスト

履行テストの支払先である積立口座は、個人再生委員が指定した銀行口座です。

東京地裁では、代理人弁護士がいても個人再生委員が選任されますので、必ず個人再生委員の指定口座に履行テストの支払いをします。

(2) さいたま地裁の履行テスト

さいたま地裁では、代理人弁護士がいれば、個人再生委員は選任されませんから、代理人弁護士の口座へ積立することになります。

代理人弁護士がいるのに、例外的に個人再生委員が選任された場合であっても、原則として代理人弁護士の口座に積立します。

3.再生計画上の返済額の計算方法

一般的な個人再生手続では、最低弁済額(法律が借金総額に応じ定めている金額。目安としては借金総額の5分の1)と清算価値(申立人が自己破産したとすれば、裁判所に処分されると見込まれる、申立人の財産の金額)の二つの金額のうち、より大きい金額が、再生計画の返済総額になります。

最低弁済額の金額は、法律できっちり決まっています。しかし、清算価値の計算方法は、各地の裁判所で異なっているのです。

(1) 東京地裁での清算価値の計算方法

東京地裁では、債務者の全財産の金額から、以下の財産の価値を差し引いた金額が、清算価値になります。

  • 現金(99万円まで)
  • 価値が20万円以下の財産(対象外の財産があります)

また、対象となる財産でも、20万円を超えると、全額が清算価値に追加されます。

申立人の財産全額が清算価値とならない理由は、自己破産手続では、生活に最低限必要な財産は処分されないことになっているからです。

自己破産手続で処分されない財産を「自由財産」といいます。99万円までの現金や、家財道具などは、法律で自由財産とされています。

東京地裁の運用では、価値が20万円以下の一定の財産、たとえば、預貯金や保険の解約返戻金なども、追加で自由財産としているため、清算価値に含まれないのです。

(2) さいたま地裁での清算価値の計算方法

さいたま地裁では、申立人の全財産から、現金その他の財産併せて99万円までを差し引いた金額が清算価値となります。さいたま地裁としては、法律上99万円の現金が自由財産となっているのだから、総額として99万円は超えられないと考えているのです。

一方で、個別の財産の金額は、99万円以内ならば、20万円を超えても自由財産としてもよく、清算価値に含めないでもよいわけです。

具体例をあげましょう。

(3) 具体例1 全財産が現金99万円と預貯金15万円のときの清算価値

①東京地裁

現金99万円も預貯金15万円も清算価値に計上されません。ですので、清算価値は0円です。

②さいたま地裁

全財産である現金と預貯金の合計104万円から99万円が差し引かれます。

清算価値は15万円です。

(4) 具体例2 全財産が現金150万円と預貯金25万円のときの清算価値

①東京地裁

現金からは、150万円-99万円=51万円 が清算価値に計上されます。

預貯金は20万円を超えているので、25万円全額が清算価値に含まれてしまいます。

清算価値は、51+25=76万円です。

②さいたま地裁

全財産である現金と預貯金の合計175万円から99万円が差し引かれます。

清算価値は76万円です。

(5) 具体例3 全財産が現金50万円と預貯金150万円のときの清算価値

①東京地裁

現金の清算価値は、99万円以下ですので0円です。預貯金は20万円を超えているので、150万円全額が清算価値になります。

清算価値は150万円です。

②さいたま地裁

全財産である現金と預貯金の合計200万円から99万円が差し引かれます。清算価値は101万円です。

全財産は高額でも、個別の財産の価値は低い場合は、東京地裁のほうが、清算価値は少なくなりがちです。

一方、さいたま地裁では、価値の大きい財産を持っている場合に、東京地裁よりも清算価値が少なくなる傾向にあります。

清算価値の計算は専門的な判断が必要となることもあり、細かい例外が多くあります。

あなたの具体的な財産の状況を弁護士に正確に伝えて、清算価値がどのようになるかを教えてもらいましょう。

4.不動産の評価方法

個人再生手続の最大のメリットは、住宅ローンを返し終わっていないため、住宅ローンの借入先である銀行やローンの保証会社に競売にかけられ処分されてしまうはずの持ち家を、処分されないようにできることです。この制度は「住宅資金特別条項」と呼ばれています。

しかし、不動産は、清算価値に含まれる財産の中でも、特に価値が大きくなりがちなものです。

持ち家の清算価値のせいで再生計画上の返済額が一気に増えてしまう恐れがあります。また、持ち家を維持する場合、住宅ローンは減額されないことも再生計画の履行可能性に悪影響を及ぼします。

もっとも、持ち家の価値から住宅ローンの残高は差し引かれます。住宅ローンのほうが高額なら、持ち家の価値は一切清算価値に計上されません。

ですから、出来る限り持ち家を安く評価してもらうほうが有利なのです。

不動産の評価方法によっては、3,4割の差が出ます。しかし、裁判所によっては、不動産の評価方法も異なります。

(1) 東京地裁における不動産の評価方法

東京地裁では、「信頼することのできる不動産業者による査定」が求められます。しかも、2つの業者による査定が必要です。

不動産業者による査定は、最も高額になりやすい不動産評価の方法です。

あげく申立人が知人の業者に依頼して不当に安く査定をすることがないように、不動産業者が信頼できることも要求されています。非常に厳しい運用といえるでしょう。

(2) さいたま地裁における不動産の評価方法

さいたま地裁も、原則としては不動産業者による査定により、不動産を評価しています。

もっとも、交通の便が悪いところに立地しているなど、業者の査定が難しい事情がある場合には、例外的に、固定資産税評価額による評価もできます。

固定資産税評価額は、業者の査定額よりもかなり安くなることがあります。そのため、申立人にとっては、不動産の清算価値が低くなるので、借金の返済負担を減らしやすくなります。

5.その他の個人再生手続の基本

東京地裁とさいたま地裁の個人再生手続の主な違いは上記のとおりです。

最後に、個人再生手続の基本的知識を、簡単に説明しましょう。

(1) 費用

①弁護士費用:おおよそ40万円から60万円

司法書士に依頼すると、10万円ほど相場は下がります。しかし、司法書士に依頼した場合、手続申立てはあなた自身で行うことになります。

そのため、個人再生委員の報酬が上がってしまいます。

東京地裁では15万円→25万円へと10万円増額します。

さいたま地裁だと、弁護士がいれば原則不要のはずの個人再生委員の報酬が、ほとんどの場合必要となります。
金額も、15万円→20万円に増えてしまいます。

②裁判に関する費用:おおよそ2万5000円から3万円

東京地裁でも、さいたま地裁でも、平成30年現在、2万5000円前後を基本として、債権者の数×100~200円程度を、申立ての際に裁判所に一括で納めます。

個人再生委員の報酬に関しては、すでに説明した通りです。

(2) 必要書類

一般的な手続で集める必要がある主な書類は下記のとおりです。
なお、裁判所や個人再生委員の指示により、追加で資料収集が要求されることがあります。

  • 収入一覧・主要財産一覧
  • 債権者一覧表
  • 住民票写しの原本 3か月以内のもの
  • 生活状況などについての報告書・陳述書
  • 家計簿 直近2ヶ月分
  • 財産目録
  • 財産価値を証明する各種書類(預貯金通帳のコピー・保険解約返戻金額証明書・退職金証明書・自動車や車の査定書など)
  • 清算価値算出シート
  • 源泉徴収票のコピー 直近1~2年分
  • 給与明細書コピー 直近2ヶ月分
  • 1ヶ月分の収入と手取り額が書かれた書類

住宅ローンの持ち家を残す場合は、主に以下の資料が追加で必要です。

  • 住宅ローンの契約証書のコピー
  • 住宅ローン返済額を証明する書類
  • 住宅ローンの保証会社と結んだ保証委託契約書のコピー
  • 持ち家及び敷地の登記事項証明書(3か月以内)の原本 など

(3) 注意点

個人再生手続にもデメリットがあります。あらかじめその内容を把握し、対策をしておきましょう。

①ブラックリスト

個人再生手続をすると、ブラックリストに登録され、クレジットカードが利用できなくなり、新規作成もできなくなります。ローン契約をすることやスマホの割賦払い、子どもの奨学金の保証人にもなれません。

10年ほどで登録は抹消され、元に戻ります。長い目でお金に関する計画を立てましょう。

②債権者平等の原則

債権者平等の原則とは、全ての債権者を公平に取り扱わなければならないという個人再生手続上のルールです。友人や勤務先であっても、お金を借りていれば手続の対象になります。

自動車ローンも対象となりますので、自動車は引き上げられてしまいます。保証人がいる借金があれば、保証人に代わりに支払うよう請求が行きます。

それぞれ、弁護士に確認して、対応策を助言してもらったうえで、関係者に事前に連絡しましょう。

もし、特定の債権者だけに優先返済をすると、「偏頗弁済」という違法行為となり、清算価値に上乗せされてしまいます。

③官報

官報に個人再生手続をする人の住所や名前が掲載されます。

周囲に知られるのではないかと非常に怖がる人が多いのですが、官報を読んでいる人はほとんどいません。あまり心配しないでください。

6.東京都や埼玉県での個人再生は弁護士に相談を

個人再生手続は、自己破産手続のデメリットを回避しつつ、借金の負担を大きく減らすことのできる便利な債務整理手続です。もっとも、その仕組みは複雑です。しかも、各地の裁判所の運用は、たとえ東京と埼玉のように隣り合う自治体であっても、細かく異なっています。

一見細かな違いが、結果に大きな影響を与える恐れがあるため、弁護士に依頼したほうが良いでしょう。

泉総合法律事務所は、首都圏に40近くの拠点を持ち、各地の裁判所の個人再生手続に関する詳細な運用実務に対応して借金問題を解決してきた、豊富な実績を持っています。借金問題にお悩みの方のご来所、ご相談を心よりお待ちしております。

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