刑事事件

盗撮の前科がある場合、量刑はどうなる?

盗撮は、各都道府県の迷惑防止条例か、軽犯罪法に抵触する可能性があります。
また、案件によっては住居侵入罪に問われることもあります。

このような前科があるのに、また盗撮をしてしまったという場合、前科は量刑にどのように影響するのでしょうか?

1.盗撮行為の刑罰

まず、盗撮行為は通常どのような刑罰を受けるのでしょうか。
盗撮行為は、第1に各都道府県の制定している迷惑防止条例違反の罪となります。

例:東京都の場合

東京都:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例

禁止される場所

公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物

住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所

禁止される行為

(5条1項2号)

人の通常衣服で隠されている下着又は身体を撮影する行為

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(8条2項1号)

常習犯

2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(8条7項)

人の通常衣服で隠されている下着又は身体を撮影するために撮影機器を差し向け又は設置する行為

6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(8条1項2号)

常習犯

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(8条8項)

(※)迷惑防止条例違反は、従来は公共の場所や乗り物での盗撮行為しか処罰の対象となっていませんでしたが、最近は、多くの自治体で改正されて、上の東京都の例のように私的な場所での盗撮行為も処罰されるようになっています。しかし、自治体によっては、まだ改正されておらず、埼玉県のように公共の場所や乗り物での盗撮行為のみを処罰対象としているところもあります。

また、盗撮のために浴室やトイレを覗き見たり、人の住居や敷地内に立ち入ったりすることは、軽犯罪法違反住居侵入罪に問われる可能性もあります。

軽犯罪法違反の罪(軽犯罪法第1条23号)

正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為

拘留又は科料

住居侵入罪(刑法第130条)

正当な理由なく他人の住居やその敷地内に侵入する行為

3年以下の懲役又は10万円以下の罰金

2.盗撮が繰り返される理由

盗撮を含む性犯罪は、再犯率が高い犯罪であると言われています。

警戒していない人が裸でいるところや、服を脱いでいる様子、性行為をしている様子をじっと見ることで性的に興奮することを「窃視症」と言い、これによって、窃視したいという衝動や空想を実行に移してしまう場合や、空想によって人間関係に困難が生じている場合を「窃視障害」と言います。

つまり、これは依存症なのです。

窃視障害に陥る人の心理について、専門の医師は、他人の日記を盗み読みするような優越感にひたってやめられなくなるとか、動画や画像を保存することで支配欲や所有欲が満たされる、行為中に強烈に感じる非日常的なスリルとリスクにハマってしまうなどを挙げています。

前科があるのに、また盗撮行為を繰り返してしまったという人で、自分もこのような心理に陥っているのではないかと思い当たる場合には、早めに医師に相談し、治療を考えるべきでしょう。

3.盗撮を繰り返した場合の処罰

(1) 執行猶予中に繰り返してしまった場合

盗撮行為で執行猶予付き有罪判決を受けたにもかかわらず、その執行猶予中にさらに盗撮行為を繰り返してしまった場合、執行猶予が取り消される可能性が非常に高いです。

執行猶予が取り消されると、前回の判決で宣告されていた懲役と今回の盗撮行為による懲役との合計で、長期間刑務所に行かなければならなくなります。

執行猶予の取消には、必要的取り消し(刑法第26条)と裁量的取り消し(刑法第26条の2)があります。

必要的取り消し

次の場合には、必ず執行猶予は取り消されます。

  • 猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき
  • 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき
  • 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき

裁量的取り消し

次の場合には、裁判官の判断によって、執行猶予が取り消されるときがあります。

  • 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき
  • 執行猶予付きの保護観察に付された者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が悪いとき
  • 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき

再度の執行猶予

ただし、今回の犯罪が、下記の条件を満たせば、再度の執行猶予をつけることができます(刑法25条2項)。

  • 前に禁錮以上の刑に処されて、執行猶予になったことがある
  • 今回の刑の言い渡しが、「1年以下の懲役」か「1年以下の禁錮」である。
  • 情状に特に斟酌すべきものがある
  • 保護観察付執行猶予中の犯罪ではないこと

執行猶予中に繰り返してしまった場合でも、不起訴処分を得たり、再度の執行猶予を獲得ができたりすれば、前刑の執行猶予が取り消させることがなくなります。
そのためには、いち早く弁護士に相談する必要があります(後述)。

(2) 再犯にあたる場合

今回の盗撮行為が、刑法上の「再犯」(※)にあたる場合、量刑が重くなります。
※ここで言う、刑法上の「再犯」とは、一般的な用語として使われる「犯罪を再度繰り返したこと」という意味とは異なり、刑法で定められた下記の条件に当てはまるものを指します。

刑法第56条
1 懲役に処せられた物がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする

刑法57条
再犯の刑は、その罪について定めた懲役の2倍以下とする

前科が、懲役刑(実刑)だった場合、その刑期を終えた後、5年以内にさらに罪を犯すと刑法上の「再犯」になります。
また、前科が執行猶予付き判決だった場合に、その執行猶予期間が終わってから5年以内にさらに罪を犯した場合も同様です。

再犯にあたる場合、懲役刑の上限が2倍となるので、例えば、東京都の迷惑防止条例では、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という刑罰であるところ、再犯の人は、「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」の範囲で刑罰が決まるということになります。

(3) 前科が罰金、拘禁、科料だった場合

前科が罰金、拘禁、科料のいずれかで、懲役刑(執行猶予の場合を含む)ではなかった場合には、「再犯」にはあたりません。
しかしながら、情状が悪いので、前回よりも重い処分になる可能性が高くなります。

刑事手続きにおいて、情状が考慮される場面は2回あります。1回目は、検察官が、起訴にするか、不起訴にするか、略式請求にするかを判断するときです。2回目は、起訴されたあと、裁判所で量刑を決めるときです。

例えば、初犯であれば、罰金ですんだ行為でも、2度目であれば、懲役刑とされてしまうということになります。

(4) 初めての発覚だが常習犯だった場合

発覚は初めてだが、盗撮の常習犯だった場合で、それが、携帯電話のデータなどから余罪がバレてしまったという場合、法律の理屈上は、被害者を異にする1回の盗撮行為ごとに1つの犯罪が成立しますから、携帯電話の動画や写真から何回もの被害者の異なる盗撮行為が立証されてしまうと、いくつもの犯罪の責任を追及される可能性があります。

上にみた東京都のように常習犯について特に重い刑を定めている場合は、その刑だけが問われることが通常ですが、そのような定めがない地方では、2個以上の犯罪で処罰され、併合罪として処理される場合もあります。

刑法第45条
確定判決を経ていない2個以上の罪を併合罪とする。

刑法第47条
併合罪のうちの2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない

刑法第48条
2 併合罪のうちの2個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。

上の条文のとおり、併合罪となると懲役刑の上限が1.5倍となり、罰金刑の上限は2倍となります。

もっとも、携帯などの画像だけから被害者を割り出すことは困難なことが多く、盗撮の余罪については立件がされないケースも多いです。

4.弁護士への相談のメリット

前科があっても、示談の成立や弁護士のサポートにより、不起訴・執行猶予になる可能性があります。早めに弁護士に相談しましょう。

最も大切なことは、被害者と示談することです。

(1) 示談の場合

被害者のいる犯罪の場合、最も大切なのは、示談交渉です。早急に被害者に謝罪し、必要な示談金を受け取ってもらうことで、被害者の処罰感情を和らげることが必要です。

性犯罪に関する示談交渉は、当事者間で行うことがほとんど不可能です。被害者の被害意識も大きいため、被疑者が示談をしたいとお願いしても、門前払いとなってしまうケースがほとんどでしょう。

そのため、早く弁護士に依頼して、示談交渉を開始してもらう必要があります。

弁護士相手ならば、検察官も(被害者の許可を得た上で)被害者の連絡先を開示してくれます。
また、被害者の方も、弁護士が相手ならば示談交渉の席についてくれることも多いです。

(2) 治療

前科があるのに、また盗撮行為を繰り返してしまったという場合は、窃視障害である可能性は高いと言えます。

そこで、弁護士から、治療・カウンセリングについて、アドバイスを得ることが有用です。そして、専門医での治療、カウンセリング、支援団体への参加など、治療の努力を始めることが必要です。

前科があるのに、また繰り返してしまったということは、「もう今後はしません」というだけでは、警察・検察にも、裁判所にも信じてもらえません。前回とは違う努力が必要です。

自分が窃視障害であることを認め、治療していくという意思や態度を示すことで、実刑判決で刑務所に収容しなくても、今度こそ、社会の中で治療を受けながら、やり直すということができるということを示して、不起訴処分、執行猶予を得るために努力するということになります。

5.二度目以降の盗撮事件弁護も泉総合法律事務所へ

このように、執行猶予中であったり、前科があったりする場合に再度盗撮で逮捕されると、初回より重い量刑となります。

とはいえ、早期に弁護士のサポートを受けながら示談を成立させ、反省の意を示すことで、再犯の場合であっても不起訴処分や執行猶予を獲得することが可能なこともあります。

盗撮の被疑者となってしまいお悩みの方は、ぜひ一度泉総合法律事務所池袋支店にご相談ください。

無料相談受付中! Tel: 0120-723-220 平日9:00~22:00/土日祝9:00~19:00
0120-723-220
平日9:00~22:00/土日祝9:00~19:00
メールでお問い合わせ